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商品の値段は誰が決める? ビジネスと法律のおもしろい関係

講義名法学Ⅰ、Ⅱ
講 師隅田浩司教授
 皆さんは、なにか商品を買おうとしたとき、「希望小売価格から30%オフ」、あるいは「メーカー推奨価格」のような値段の表示を見たことがあると思います。また、ソニーやパナソニックなどのホームページを見ると、商品の価格のところに、「オープン価格」と書いてあるだけで、値段が書いていないこともありますね。これは、なぜでしょう?
実は、これは、法律が関係しているのです。

 日本では、商品を製造したメーカーは、一度、その商品を卸業者や小売業者に販売するときに「この商品は、希望小売価格で売ってください」とか「値引きはしないでくださいね」といったお願いをしてはいけないことになっています。
法律用語ではこれを、「再販売価格維持行為の禁止(独占禁止法2条9項4号、同法19条)」といい、ビジネスにおける公正な競争を守る法律である独占禁止法がこれを規制しているのです。

 ただし、希望小売価格や、メーカー推奨価格をメーカー側がインターネットのウェブサイトなどで公表することは問題ありません。それが、あくまでもメーカーの希望を表明するだけであれば別にかまわないと考えられています。しかしそこから一歩踏み出して、卸業者や小売業者に「希望小売価格で販売してほしい」と要請した場合は、独占禁止法(独禁法)に違反することになるのです。

 日本では、再販売価格維持行為は厳しく禁止されています。しかし、メーカーのマーケティング手段として再販売価格維持行為が、競争にプラスの影響を与える場合もあります。
たとえば、あるお店で詳しい商品説明を聞いた後で、同じ商品を他の安売り店で買ってしまうような場合もあります。この場合、詳しい説明をしたお店のサービスに、安売り店の側が「ただ乗り(フリーライダー)」しているとみなすこともできます。こうしたことが競争全体に悪影響を与える場合、例外的に再販売価格維持行為を認めることもできるのです。独禁法を管轄する公正取引委員会は、再販売価格維持が原則違法であることに変わりがないものの、フリーライダー問題をより細かく取り上げたガイドラインを2015年3月に公表しました。

 このように、ビジネスのなかで一番大切な値段のつけ方や、マーケティングのやり方を考えるとき、法律の知識は不可欠です。
法律の知識がビジネスの武器になることもあります。一見、無関係のように見える法律とビジネスがどのように関係しているのか、それを学ぶのも経営学部のおもしろさなのです。
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